ヴァンパイア夜曲
どきり、とした。
今でも鮮明に浮かび上がる惨劇の夜の記憶。
彼のいう通り、私は両親に“生かされた”。樹海に向かうのを引き止められるのも当然だ。
言い返す言葉が見つからない。
ーーコツ。
その時。黙って話を聞いていたシドが前へ進み出た。その背中に目を見開くと、シドの低く艶のある声が玉座に響く。
「王のお気持ちは十分分かります。…ですが、こちらもここで引き下がるわけにはいきません。一人で行くわけじゃあない。こいつは……」
はっ、と言葉を止めるシド。
こほん、と咳払いをした彼は、凛とした声で言い放った。
「“姫”は、俺が命をかけて守ります。」
(ーー!)
ふいに高鳴る胸。
こんな宣言を聞けるだなんて思ってもみなかった。ランディまでも目を見開いている。
ーー確かに、私は一人ではない。
薔薇の廃城の真実を追いローガスの始末を託されたシドと、父の仇を取ると誓い街を出たランディと、ずっと旅を共にしてきた。
これほど信頼の置ける力強い味方はいないのだ。
すると、長い沈黙の後、セオドルフ王はシドを見つめ、やがて、はぁ、と息を吐いて呟く。
「…仕方ない。そこまで言うのなら、“チャンス”をやろう。」
(え…?)