ヴァンパイア夜曲
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「ーー本当にお世話になりました。そろそろ街を出ようと思います。」
ーー翌日の朝。
私は一人、玉座にいるセオドルフ王を訪ねていた。
白い髭を撫で、むぅ、と呼吸をした彼は、深いため息をついて呟く。
「昨夜はすまなかった、レイシアさん。せがれが馬鹿な真似をしたそうで…」
「えっ!えっと…、いえ、平気です…!未遂でしたので…!」
この受け答えはおそらく正解ではないが、真実ではある。躊躇しながらそう答えると、セオドルフ王は心から申し訳なさそうな顔をしてぽつり、と続けた。
「…私は、あいつを少し甘やかして育ててしまったようだな。この城の王位継承者はタンリオットだけ。…あいつには、近々、何らかの“キツいお灸”をすえなくては…」
(“キツいお灸”…?)
ぱちり、とまばたきをする私に、セオドルフ王は「気にしないでくれ、こっちの話だ。」と苦笑する。
「…さ、名残惜しいが、挨拶はここまでにしよう。君の仲間が、城下町の外で待っているのだろう?」
「!」
「ツライ旅になるだろうが、困ったことがあればまたいつでもここに来るといい。出来る限りの協力をしよう。…のちに、レイシアさんは私の“娘”になるわけだからな。」
「……はい。」
ぺこり、とお辞儀をした私は、くるりと玉座に背を向けて城を出た。
ガヤガヤと賑やかな街並みを通り過ぎ門を出ると、そこには見慣れた仲間たちが立っている。