ヴァンパイア夜曲


反論も聞かぬまま廊下へ旅仲間たちを放り出した私。

バタン!と扉を閉めた瞬間、ドッ!と体が熱くなる。

へなへなと座り込むと、シドの声が頭の中にこだました。


“俺はもう、お前に血も心も奪われてんだ!俺だって、お前を欲しくなって当然だろ!”


“…俺は、お前しか見てないのに…ちょっとくらい、俺にもお前を独占させ……”


「なんなの、あの男はぁ……!」


膝に顔を埋めると、嬉しさと戸惑いが混ざったような気持ちが込み上げた。

あれが、シドの本心なら。

普段のポーカーフェイスに隠されていた恋情なら。

私はどれだけ、彼に我慢を強いてきたのだろう。


ーー首筋にくっきりと浮かぶ“口づけの跡”。いつもなら、絶対こんなことはしないシドが、初めて自分から私に触れた。

わずかに残る痛みと彼の温度に、心が揺れる。

しかし、同時に私の頭をよぎっていたのは、タンリオットの姿だった。


ーーー
ーー



「…ねーぇ、シド。従者設定を必死に守ろうとしてくれたのはいいんだけどさぁ、“俺の姫”とか口走らないでくれるかな。そこはせめて、“ウチの姫”とかじゃないと…」


「…。」


「まぁ、止めなかった僕も悪いけどさぁ…。……シド、あのシスコンお兄ちゃんに殺されるんじゃない?」


「………。」


一方、廊下でしゃがみ込むランディの言葉に、顔を上げないシドは、数秒前の自分を思い出し何も言葉を発することが出来なくなっていたのだった。

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