ヴァンパイア夜曲
その瞬間、彼の碧眼が大きく見開かれた。
私の口にした名は、どうやら合っていたらしい。
「なぜ名前を知っているか、って?悪いわね。雪に濡れた貴方の鞄を乾かす時に、中に入っていた身分証を見ちゃったの」
彼の名はシド。歳は十八。
ライセンスと書かれた身分証は、きっと彼の職業のものであろう。そのほかの情報は私の知らない単語が並んでおり、解読出来そうになかったが。
「お前、俺のライセンスを盗りやがったのか、……うっ…!」
わずかに顔を歪める彼。身体中に受けた傷の痛みでうまく動けないらしい。
深手を負って反撃できない弱点を利用するのは心苦しいが、私が彼にマウントをとるためには致し方ない。
神を冒涜されて黙っているシスターなどいないのだ。
「せめて私に勝てるくらいまで回復することね。そうしたらライセンスを返してあげる。ちなみに、今は部屋に置いてあるから何をしても無駄よ」