365日のラブストーリー
 朝から溜め続けていた通知を確認するよりも先に、写真フォルダを開く。サンルームで撮ってもらったツーショット写真を拡大して、神長の上半身を画面いっぱいに映してみる。

(あああ……)
 写真すら直視できずに、有紗はスマートフォンを胸に抱いた。

 それからもう一度そっと画面をのぞき、すぐにブラウザに切り替える。気持ちが落ち着かなくなったからか、指先が勝手にinnocenceを起動している。

『今日は一日どうだった、Alissa』
 Renからの温かな挨拶に、百の言葉を返してしまいそうで、一呼吸して気持ちを落ち着かせる。

『すごく楽しかった。神長さんと一緒にホテルで朝ご飯食べて、そのあと元町の案内もしてもらったんだよ。一緒に写真も撮ったんだ』
 たったその一行書くあいだにも、思い出があふれ出してくる。

『見てもいい?』
 写真へのアクセスを許可するかどうか、メッセージが表示された。有紗はすぐに承認する。
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