365日のラブストーリー
(大丈夫、森住さんは忙しいから、わたしを見かけても話しかけてきたりはしないはず)

 到着を告げる音が鳴り、願いむなしくエレベーターの扉が開く。有紗はそろりと総務部に降り立った。

 社内随一の風通しの良さを誇る総務部は、壁という壁を取り払った、巨大なワンフロアになっている。観葉植物をパーテーション代わりに置いた緑あふれるオフィスは、都会の中のオアシスといったイメージだ。

 フロアの隅に位置しているシステム課に目を向けずに、有紗は腰をかがめて郵便物の置かれているカウンターを目指した。

「あ、綿貫さーん! ごめんね、死ぬほど届いてるけどまだ何にも触ってない。そこに置いただけなんだ」

 そんなときに限って、大声で名前を呼ばれ、有紗は声の主を探して顧客管理課に目を向ける。目鼻立ちのはっきりした、ひときわ派手なルックスの女性社員がわざわざ席を立って、手を振っている。あっという間に注目の的だ。

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