365日のラブストーリー


 壁一面の窓から差し込む日差しの暖かさに、春の訪れを感じながら、有紗は遠い波間にぽつんと浮かぶヨットの帆を眺めていた。神長が選んだのは、葉山にあるプライベート感のある別荘だった。

 このあたりでは、高級別荘をまるごと一棟レンタルし、暮らすようにそこで過ごすという遊び方があるらしい。以前、サンルームが好きだと言ったから、この場所を選んでくれたのだろうか。食休みのうららかな時間も格別だった。

 ここに来る前に寄った、三浦半島の東側の海ではたくさんのコンテナ船が行き交う商業を感じさせる海だったのに、西側はがらりと雰囲気が違う。

「たしか近くにヨットハーバーがあったんですよね?」有紗が訊くと、
「ええ。コンテナ船のほうが好きでしたか?」神長が笑った。

「どっちも好きです」

 海といえば海水浴やダイビングのイメージが強かったが、昔家族と一緒に行った海沿いの工業地帯を眺めたときに、リゾートとは違う側面にはっとさせられて、人々の生活に寄りそうような雰囲気を好きになった。
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