ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
「ねえ、もう一度聞くけど、瑞樹の見間違いってことはない? 甲斐くんに似た別の人だったんじゃないの?」


海莉が疑わしそうに言ったけれど、あたしは首を横に振った。


「ううん。あたしが雄太を見間違えるはずないもん」


「……だよね。そもそも甲斐くんレベルのイケメンが、そこらへんにゴロゴロいるわけないし」


海莉は深いため息を吐いて、「ああ、もう!」と頭を抱えた。


「瑞樹から電話もらってから、あたしも頭の中グチャゴチャ。甲斐くんのバカヤローとか、田中許すまじ!とか、怒りのホルモンが鎮まんないよ」


「でもね、考えてみればそんな風にふたりを責める権利、誰にもないんだよね」


あたしが静かにそう言うと海莉は目を剥いて大声を出す。


「あるよ! 甲斐くんが瑞樹に告白したのはついこの前じゃん! なのになんなの、その変わり身の早さは。あたし正直言って甲斐くんのことちょっと見損なってる!」


「でも可能性を潰したのは、あたしだから」


あのときあたしの目の前には雄太と恋人になる選択と、ならない選択があって。


ならない方を選んだのは、他の誰でもないあたし自身だ。
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