ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
「ねえ海莉。あたし、間違ってないよね?」


あたしは雄太との関係を、幼なじみのまま留めておくことに決めた。


それが一番いい選択だと思ったから。


その判断を、誰かに認めてほしい。自分以外の人に肯定してほしい。


『それでいいよ。間違いじゃないよ』って断言されて、安心したいんだ。


「うーん。間違ってるのか正しいのかなんて、あたしには判断できないなあ」


でも海莉は、あたしのほしい言葉を簡単にはくれなかった。


ヒョットコみたいに尖らせた唇と鼻の下の間にシャーペンを挟んで、あくまでも自分自身の考えを正直に話す。


「瑞樹の気持ちはわかるよ。けど、すんごくもったいないとも思う! 一番大事なポイントを見失ってる気がする」


昨日も似たようなこと言われた。


たとえるなら、海で溺れかけているときに、奇跡的に近くを通りかかった船に助けを求めようとして、


『いや待て。もしもあの船が難破したらどうしよう!?』


って心配して、そのまま黙って船を見送ってるようなものだって。


海莉の言うことも、もっともだと思う自分がいる。


もしかして、取り返しのつかないバカなことしてんじゃないか?って思うときもある。
< 86 / 223 >

この作品をシェア

pagetop