クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!

「長田さんとは合わないと思います」

「セックスが?」

「はぁ?」
これぞセクハラっ!
大きな声を出す私を見て、目の前の男は爆笑している。
いやムカつく。

「それは寝てみないとわからない。けっこう自信あるよ俺」

なにこの俺様。
金持ちイケメン医者だから許されると思ってるの?
ないわー。ないない。

「緒方玲菜さん?」

「はい」

「結婚しよう」

「帰ります」
プツンと頭の中で何かが切れる。きっとそれは理性という細い糸だろう。
初めて会う相手に、ここまでバカにされるなんて信じられない。
「さようならっ!」と勢いよく立ち上がり振り向きもせず出口に向かった。怒りの沸点爆発しそう。ティファールの電気ポットより勢いのある熱量だろう。

長田さんは私を止めもせず、後ろで笑っているのだろう。
見なくてもわかった。

くやしいーー!
奥歯ギリギリ噛みながらカフェを出てロビーに出ると、フロント前で大下さんが外人さんと話をしていた。

背が高くて足が長い。
通訳なしで会話している。
あの若さでホテルの専務なんてすごいなぁ。

ふと私の目線に気付いたのか、大下さんはこちらを見てニッコリ微笑んだ。
笑顔が優しくて、しゅるしゅると怒りの沸点が下がってゆく。

こんな世界もあるんだね。

さて
家に帰って
留守番三人組に怒られましょう。

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