クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!
「お昼だよ―。時間がないから早く行くよー」
ふわりと甘い香りと気配が背中からやってきて、振り返るとやっぱり凜華ちゃんだった。
今日は艶のある髪をアップにまとめていて、男性社員の目線が彼女の綺麗なうなじに注目していた。
「まだ時間前だよ」
私はキーボードを動かしながら返事する。
凜華ちゃんはデスクの横にくっついて座り込む。
「早く行こう。今日は社食が混むんだもん」
形の良いピンクの唇が文句を言う。
「混まないって……この数字出してから行く、先に行ってて」
力を入れて売り出した新製品の売り上げがイマイチだった。置き場所で負けたか……どうしても勝ちたい地区で負けている。ライバル会社の営業が新しくなってゴリオシだから、うちの新井君じゃ弱いな、係長に午後から相談して一緒に行ってもらった方が……
「玲菜」
凜華ちゃんに背中を引っ張られながらパソコンを見つめ考える私。
「れーなー!」
怒ったような凜華ちゃんの声に反応して振り返ると、フロアの入口がザワついている。
「お昼行こう!」
綺麗な顔が半べそ状態。
私はそこでやっと凜華ちゃんの意図を知った。