羊かぶり☆ベイベー
吾妻さんは私を見て微笑むと、本題のカウンセリングの準備に、手を動かし始めた。
「みさおさん、許してくれてありがとう」
「許すも何も、始めから吾妻さんには怒ってませんから」
「俺には怒ってないの?」
「はい。優柔不断な私自身に苛立っていたんです」
「そっか」
「だから、もう、気にしないでください」
「うん。ありがとう。本当に、みさおさんには驚かされる」
「え」
「さて、じゃあ相談内容を聞かせてもらいたいんですが……」
私の気になることは、吾妻さんによって遮られた。
吾妻さんが時々呟く言葉が、少し気になる。
でも、気になったところで、特に重要だとは思わないので、追求する訳ではないけれど。
私も改めて、ここへ来た目的を思い出し、姿勢を正す。
「お話を聞かせてもらう前に、確認させてもらいたいんですが。みさおさんの話してくれる内容を、メモに取らせてもらってもいいですか?」
「あ、はい」
「ありがとう。では、どんなことを相談したいのか、みさおさんのペースで良いので教えてください」
「はい」
「ちなみに、言いたくないことは、無理に言わなくて良いからね」