羊かぶり☆ベイベー
「みさおさんの方から頼ってきてくれるなんて、考えもしなかった」
改めて、目が合う。
その吾妻さんの表情は、何故かしら気まずそうだった。
「……どうされたんですか?」
「いや、俺、みさおさんに不快な思いさせちゃったかなって、ずっと引っ掛かってたからさ」
私たちが最後に、あのお店で会った日。
その日の別れ際のやり取り。
吾妻さんがそこまで、深く考えてくれているとは、正直なところ意外だった。
私が隠しているつもりだった苛立ちも、見抜かれてしまうのだから。
「そんな……私の方こそ、失礼な態度をとって、すみませんでした」
私が申し訳なく思い、ぐっと眉根を下げた。
すると、吾妻さんも困り顔を見せる。
「やっぱり優しいなぁ、みさおさんは」
「え、そんなこと……」
唐突に褒められると、恥ずかしくなった。
吾妻さんの瞳は、よく見ると不思議な雰囲気を醸している。
吾妻さんに掛かれば、隠したところで、きっと内面も何もかもを覚られてしまう気さえする。
それって、私にとっては恐ろしいこと。
だって、どんどん自分を知られていくということには、違いないのだから。
そんなことを考えながらも、相談を聞いてもらいたい、なんて矛盾している。