もう一度〜あなたしか見えない〜
その後、夫との連絡は完全に途絶えてしまった。携帯は留守電になるだけ、メ-ルにも返信はなし。当然、どこに宿泊しているのかもわからない。


会社を訪ねるという手はある。なんと言っても、私はまだ妻なのだから、面会に来たといって門前払いされることはないだろう。


とは言え、そこで騒ぎになるのも本意ではない。やむなく、私は夫が残して行った名刺の弁護士に連絡をとった。


名刺から女性であることは、わかっていたが、声の感じは予想していたより、若い感じがした。彼の退職の影響が、所属ラインの違う私にも及んで来始めていて、有休の取得が難しい為、土曜日の午前中の面談となった。


当日、約束の時間の15分ほど前に到着した私を、受付の女性は丁重に迎えると、面談室まで案内してくれた。それから待つこと数分、入って来たその弁護士は私より少々年上のキビキビした感じの人だった。


「お待たせしました。」


差し出す名刺を、既に夫から預かっているからと辞退すると、弁護士は早速本題に入った。


「念の為、申しあげておきますが、私はあなたのご主人からのご依頼で、本件を担当させていただいてる者です。あくまで法律に基づいて、お話を進めさせていただきますが、完全な中立の立場ではありません。少しでもご主人にとって有利な条件で、本件を解決することが私に与えられたミッションです。そのことは十分、お含みおきください。」


私はあなたの味方ではない、当たり前と言えば当たり前なのだが、改めてそう宣言されると、こちらも身構えるしかない。まずは彼女の出方を窺うことにした。
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