もう一度〜あなたしか見えない〜
我に返った私は、彼への挨拶もそこそこに、駅に向かって走り出した。


なぜ、なぜ、あの人は、夫はあの場所に現れたのだろう?ばれるはずがなかった、証拠など、何もないはずだった。だが、現実に夫は、私達の前に姿を現し、あまりにも意外な言葉と態度を残して、去って行った。


(違う、違うの!)


いったい何が違うと言うのか、必死になって走りながら、心の中で叫んでいる自分を蔑むように見つめているもう1人の自分がいる。


走りながら、携帯を取り出し、夫の携帯を鳴らすが、虚しく留守電になるだけ。運転中で、出られないのかもしれないと、電車に飛び乗った後、今度はメ-ルに切り替えるが、何の反応も返っては来ない。


帰る場所は同じはずなのに、夫は一緒に帰ろうとも言わず、私に車に乗るように促すこともせず、1人で走り去って行った。


そこに夫の私に対する失望と嫌悪を感じずには、いられなかった。
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