もう一度〜あなたしか見えない〜
やり直しの新婚生活が始まってから、そろそろ3ヵ月が経とうとした頃、私は意を決して、夫に声を掛けた。


「あなた、話があるの。」


「なんだい?改まって。」


洗い物を終えた手を拭いながら、夫がテ-ブルに着く。


「あなたは幸せ?」


「えっ?」


「私とまた結ばれて幸せ?」


「なんだよ、急に。」


「お願い、答えて。」


私の真剣なまなざしに、夫は戸惑っている。


「もちろん幸せだよ。君は幸せじゃないの?」


「ううん、とっても幸せだよ。」


「なんだぁ、ビックリした。じゃ、問題ないよね。脅かすなよ。」


ホッとしたように笑顔になる夫に対して、私の表情は硬いまま。


「でも、このままで、本当にいいの?」


「どういうこと?」


「今のあなたの姿が、あなたが本当に望んでいるものとは思えないんだよ。」


私はそう言うと、夫を見る。


「スマン。」


そう言うと、夫は私に頭を下げる。


「確かに今は、君に頼りきってしまっているからね。だいぶ、君の体調も落ち着いて来たようだし、前にも話した通り、そろそろバイトを・・・。」


「私が言いたいのは、そんなことじゃないの!」


私は別に、夫が定職に就いてないことが不満なんじゃない。夫が側にいてくれれば、夫と一緒にいられれば、私はそれでいいんだ。だけど・・・。


「さっきも言った通り、私は今、本当に幸せだよ。だけどその幸せが、あなたの我慢によって成立しているんだとしたら、そんなの意味ないよ。」


その私の言葉に、夫は驚いたように、こちらを見る。
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