自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
望遠鏡を下ろしたセシリアが、ツルリーの指差す方を見ると、この大邸宅と馬場の間の土の地面を、クロードが歩いている。

ひとりではなく会話しながらであり、その相手は国王であった。

北側に向けてゆっくりと進むふたりは、立ち止まって言葉を交わし、また歩きだすというのを繰り返している。


「お父様とクロードさん……一体、なにを話しているのかしら?」


望遠鏡を覗くと、ふたりの横顔が確認できた。

国王は険しい顔をしており、クロードは真剣になにかを訴えているような表情だ。

ただならぬふたりの様子に、セシリアは不安を覚え、鼓動が嫌な音で鳴り立てた。


(私のことを話していると思うのは、考えすぎよね。クロードさんが、私についてのなにを訴えるというのよ。でも、気になって仕方ないわ……)


望遠鏡を外したセシリアは、早口でツルリーに言う。


「クロードさんを追いかけるわ。声が聞こえる距離までこっそり近づきたいの」

「盗み聞きですね。いいと思います! 私もご一緒しますか?」

「いいえ、ひとり方がコソコソしやすくて見つからないと思うの」

「わかりました。ご健闘を祈ります!」

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