自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
興奮するツルリーから逃げるように視線を馬場に向けると、訓練は小休憩の様子。

剣を鞘に収めたクロードが、ゆっくりと馬を歩かせていた。

その視線がこちらに流された気がして、セシリアは心臓を大きく波打たせる。


(気づかれたかしら……?)


けれども距離が遠すぎて、盗み見がバレてしまったかどうかは、確認することができなかった。


それから二日が経った真夜中のこと。

王城内の廊下は静まり返り、ほとんどの者が眠りに就いていると思われる。

照度を最小まで落とした壁掛けランプが、ポツリポツリと灯される中、一階の北棟の廊下を、一列になって忍び足で歩く者が三人いた。

セシリアと、双子の侍女である。


真ん中を歩くセシリアは、頭巾を目深にかぶり、質素なエプロンドレス姿である。

「誰にも見つからないようにお願いね」と、侍女たちに頼めば、後ろをついてくるツルリーが、「わかりました」と小声で返事をした。

しかしその直後に、「ワクワクして、歌でも歌いたくなっちゃいますねー!」とはしゃいだ声を上げられたから、セシリアは困ってしまう。

いつも賑やかなツルリーに手伝いを頼んだのは間違いであったかと、少々後悔していたら、先頭を進むカメリーが、「静かに。前方から誰か来ました」と緊張を走らせた。
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