自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
ジャルダンは、頭を抱えてうつむいた。

チャンスは今年のみというのは、一体どういうことなのか……。

言葉尻は小さくて聞こえなかったが、今回、受賞を逃せば、王城庭師を辞めねばならないような口振りでもあった。

よく事情が飲み込めないが、絶望に浸るジャルダンと対峙しているセシリアは、もしや、とんでもないことをしてしまったのではないかと気づきかけていた。


(ど、どうしましょう……)


動揺の波がたちまち心に広がった、その時、後ろから数人の足音が聞こえた。

「少々、早く到着してしまいましたが、審査を初めてもよろしいですかな?」と問いかけられる。


セシリアたちが振り向けば、庭園品評会審査員の腕章をつけた男性四人と女性ひとりが、並んで立っていた。

五人とも小綺麗な身なりをしており、代表者と思しき男性は、恰幅のよい体型をして、白い口髭を生やした初老の紳士である。


セシリアは彼らの顔を覚えていないが、「これはこれは王女殿下。おはようございます。ご同席でございましたか」と恭しく頭を下げられた。

初老の紳士は、自分は庭師連合会の会長で、品評会の審査員長も務めていると説明し、それから「王女殿下は出品者のジャルダン殿の応援でございますか?」とにこやかに問いかけてきた。
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