自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
謝りたくなるのを我慢して、「ええ、そうよ」と答えたセシリアは、ニッコリと作り笑顔を浮かべた。

楽しんで悪事を働いたと思わせる方が、より悪役令嬢らしいと思ったからである。

ジャルダンの心は、ようやく衝撃から怒りの段階へと進んだようで、王女に一歩近づくと、険しい顔をして詰問する。


「なぜ、そのようなご無体なことをなさるのですか! 私がどんな思いで、この庭を造ったと思っておられるのですか!」


使用人男性に怒鳴りつけられたのは、これが初めての経験である。

その剣幕に怯え、思わず片足を引いてしまったセシリアだが、怒られるのは覚悟の上……いや、怒らせて悪い噂を流してもらうことが目的であるため、気持ちを立て直して、横柄な演技をしてみせた。


「単純でつまらない庭だと思ったんですもの。だから、楽しくなるように、手直ししてあげたのよ。わたくしのせいで受賞を逃すというのなら、また来年頑張ればいいわ」

「来年なんて、ありませんよ! 今年が最初で最後のチャンス。受賞できなければ、私はもう、王城庭師としては……」

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