自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
どよめいた審査員たちの反応に、セシリアは焦りだす。


(呆れてすぐに帰ってしまうのではないかしら? 我々を愚弄しているのかと、怒るかもしれないわ。せめてジャルダンさんが叱られないように、私がめちゃくちゃにしたのだと言わなければ……)


庭のすぐ手前で足を止め、横並びに立っている審査員五人に、セシリアは「あの……」と後ろから声をかけた。

しかし、誰も振り向かず、声をかけられたことにも気づいていないようだ。


セシリアが再度、声をかけようとしたら、帽子を被った中年の女性審査員が、「まぁ、なんて楽しいお庭でしょう!」と突然叫んで、庭園内に駆け込んだ。

興奮している様子であるが、それは彼女だけではなく、他の審査員たちも同じである。

男性のひとりが、「斬新で前衛的な造り方だ。こんな様式の庭は見たことがない!」と大声で評価すれば、もうひとりが、「庭造りの革命が起きましたな!」と何度も頭を縦に振って感心していた。


別の審査員は、セシリアの作った動物の生垣をしげしげと眺め、朗らかに笑って言う。

「我々は古い固定観念に囚われすぎていたのかもしれませんな。このように自由な発想でつくられた庭があってもよろしいのでは? 実に愉快で爽快な気分にさせてもらえます」

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