自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
思いがけずに審査員の四人が高評価を下す中、庭をひと回りした審査員長が戻ってきた。

彼は目を白黒させているジャルダンの前に立ち、彼の両手を取ると、鼻息荒く評価する。


「まさに傑作! たぐいまれなる才能だ。ジャルダン殿、あなたは天才です。画期的すぎて我々の評価基準を超えており、金賞を与えてよいのかすらわからない。そうだ、こうしよう! あなたには審査員特別賞と、庭師連合会役員の名誉を授けよう!」


ジャルダンはひと言も発することができず、ただ驚きの中にいるようだ。

セシリアと侍女ふたりも予想外の展開に、唖然とするばかりである。

審査員たちだけはワイワイと上機嫌に盛り上がり、まだこの庭についての講評を続けていたが、ひとりが懐中時計を取り出すと、「時間が押しています!」と焦り顔で指摘した。


「十五時から港前の広場にて表彰式ですぞ。ジャルダン殿、どうぞお忘れなく!」


帽子を被り直した審査員長がそう言うと、それから五人は慌てた様子で立ち去った。


小鳥のさえずりが聞こえる。

あたりは急に静かになり、穏やかな早朝のひと時が戻ってきたかのようだ。

審査員たちの背中が完全に見えなくなると、セシリアとジャルダンはゆっくりと顔を見合わせる。

そして視線が交わった直後に、両者はハッと我に返った顔をした。
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