初めまして、大好きな人



―十二月五日水曜日 PM10:20
 朝、私は絶叫した。
 このノートに書かれていること、
 施設長が話してくれたことに打ちひしがれて、息も出来なかった。
 本当に、私は記憶を失ってしまうんだ。
 信じられないけれど、全部本当のことらしい。
 私には親もいなければ、昨日の記憶すらない。
 この五ヶ月、私の記憶はすっぽりと消えてしまっていて、
 残っているのは五日前の記憶だけ。
 今日の私も、日記に書いてある通りの行動を取った。
 「ヴァポーレ」に入ると、
 いつも頼んでいるというショコラミントを頼んだ。これまた美味しい。
 そこで私は、あの男に会った。不審者だという男に。
 変なTシャツを(しかも、なんと半そで)着ていて、なんだか浮いてる。
 でも顔はイケメン。高校生かと思っていたんだけど、なんとその男、
 話しかけてきた!
 名前は、えのもとなお(もし次に会ったら漢字を訊かないと)って言って、
 二十三歳。六つも離れている大学生なんだって。
 自称イケメン大学生なおは私を車に乗せて山の中に連れて来た。
 辺鄙なところだけれど、頂上から見える景色は最高だった!
 とても綺麗で、町全体が見渡せる場所。
 なおは私の手を取って紳士らしくエスコートしてくれた。
 この人、いい人なのかもしれない。
 

 なおは英語もドイツ語もフランス語も話せるらしい。
 車の中では洋楽を聴いていて、歌も上手かった。
 ここになおの好きな曲をメモしておこうと思う。
 時間があったら検索して聴いてみて。
 絶対に好きになると思うから。
 

 家に帰ると眼帯をした男の子、葉山雄介と話をした。
 五歳の頃に親に捨てられて、今でも大事にお父さんの写真を持っている。
 左目には深い傷跡があってかわいそうだった。
 私はこの子のことも覚えておこうと思う。
 会ったら優しくしてあげて。
 今日は昨日よりも内容が濃い一日だったと思う。
 明日はどんな日になるのかな。
 それじゃあ、おやすみなさい。





< 33 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop