初めまして、大好きな人



カランコロンと音が鳴って、
店員さんが出てくる。


ちょっと不愛想な男の店員さんだった。


「おひとりですか?」


「あ、はい」


「好きな席にどうぞ」


ぶすっとした表情のまま私を奥へと促す店員さん。


なんだか萎縮してしまって、
慌てて店内を見渡す。


迷った挙句に、私は入り口に一番近い席に座った。


なんだかおかしいなと思ってノートを見返すと、
いつもと違うことに気が付いた。


いつもは愛想のいい女の店員さんだったんだ。
今日は男の人だ。
違和感を感じたのはそこだろうか。


「ご注文は?」


気付いたら店員さんがお水を持ってきていて、
雑にテーブルに置くとそう言った。


「あの、いつものを……」


「はい?」


「えっ、と……あの、
 ショコラミントをお願いします……」


「かしこまりました」


今にも舌打ちをされそうな店員さんの態度に
おずおずと注文を告げる。


なんだか居心地が悪い。
こんなお店、早く出なくちゃ。


そう思って辺りを見渡す。


その尚央って人はどこにいるのよ。
早く来てよ。


「お待たせしました」


乱暴に音を立ててショコラミントを置く店員。


小さく「ありがとうございます」と呟いて、
店員さんを見た。


「何か?」


「えっ?あっ、いえ、なんでも……」


不機嫌そうな店員さんは
そのまま背中を向けて奥へと消えた。


一体何がどうなっているの?


今まで一度も、この不愛想な店員さんが出てきたことはない。


日記にはいつも愛想のよい店員さんがいたはずなのに。


今日はついてないんだな。
こんな日もあるのかな。



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