恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
絵梨の言っていた再婚話が本当だとしたら、再婚相手もそこにいるかもしれない。
そう思うと、自分のことではないとはいえ緊張してくる。
(あ、私に関係なくはないんだ。だって、もしもそうなら父親になるんだから)
そこまで考えたところで着物の女性が立ち止まって両膝を突き、目の前の引き戸を開けた。
「こちらでございます。どうぞ」
かしこまって言われ、梓が息を飲む。一歩足を踏み出したところで、こちらに顔を向けて座る男性の姿が見えた。
(やっぱり! お母さん、本当に再婚するつもりなんだ……!)
もしかしたらと予想していたとはいえ、実際にそれを目の当たりにすれば、どうしたって驚く。
「お母さん、お待たせ」
耳打ちするかのような声でこそっと言いながら、梓が座敷に入る。
陽子の隣の座布団の上に正座で座った。
「梓、急にごめんね」
「ううん、それはいいんだけど……」