恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

このまま次期院長として輝かしい未来に飛び込めば、なに不自由なく生きていけるのではないか。
そう考える裏側で、べつの感情も抱えていた。

最初から用意されていた人生をこのまま歩いていいのか。勉強も運動も好きだが、だからといって誰かから決められた〝人間〟でいいのか。
相反する気持ちの狭間で揺れながらも、一樹は最高学府と呼ばれる大学の医学部へ進んだ。

そんなあるときだった。たまたま歩いていた街で、突如として現れた〝虹の空間〟に魅入られた。

それは、街の一角を使った空間パフォーマンスだった。
光や水を使い、あらゆる形や色の虹が街中に出現する。その様は、一樹の目と心を一瞬にして奪った。
時間の経つのも忘れて見入り、日が暮れるまでその場に立っていた。

もともと絵を描いたり、物を作ったりするのが大好きだった一樹は、〝これだ〟と直感。自分のしたいことは、ここにある。
そう思ったら、医学の道に可能性を見出せなくなった。

両親が喜ぶから、周りが褒め称えるから。そんな理由で歩いてきたレールの上から降りることを決意。大学を退学した。
情報をかき集め、空間デザインを学べる専門学校への入学を決めたのは、それからすぐだった。

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