恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

「梓、来てみたいって言ってただろう? 引渡し前の完成版を誰よりも早く見せてあげようと思ってね」


梓は、一樹の粋な計らいがうれしかった。

プラタナスが植えられた駐車場の地面も、建物と同じく白で合わせられ、一体感を感じさせる。緑と白のコントラストが美しい。

その一角に車を停め、一樹が梓を助手席から降ろす。手を引かれながらS字を描いた緩やかなスロープを上がり、一樹が開錠したドアから披露宴会場の中へ入った。

窓を大きく配し、明るさと丘の上からの眺望が存分に生かされている。
天井には雲を模した照明がいくつも連なり、空に近い式場のコンセプトをもとにした造りとなっている。見上げると、丘の上に雲がたなびいているような演出だ。
外観同様に白を基調にした室内は、とても明るい。


「とても素敵です。何度か友人の結婚式に参列したことがありますけど、ここまで素敵な式場は初めて見ました」


さすが空間デザイナーの一樹だ。


「梓に喜んでもらえるのが、俺にとっては一番だ」


一樹の言葉がくすぐったい。

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