恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
歳は三十代前半。目鼻立ちの整った男だ。
「は、はい、なんでしょうか」
梓と絵梨が取り繕いつつ男に身体を向けると、「トイレはどちらでしょうか?」と質問された。
「それでしたら、そこの螺旋階段を上がって左手にございます」
男は階段を見上げ、梓の言葉を小さく繰り返す。
「あの、ご案内いたしましょうか?」
どことなく不安そうにする男を放っておけず、梓がそう問いかける。招待客は会社関係者。不親切にするわけにはいかない。
「それじゃ、お願いしてもいいですか?」
絵梨に目で〝行ってくるわね〟と告げ、男の斜め前方を歩く。
ダイニングの中で最も存在感があり、大きく煌びやかな螺旋階段を上がりながら、時折後ろを気遣う梓。
「とても立派な創立パーティーですね」