堅物社長にグイグイ迫られてます
ちなみに浮田さんは半年前にパリから帰国したばかりの三十代後半のファッションデザイナーの男性だ。都内に自分のショップを持つことになったらしくその設計を佐原さんに依頼している。

「七時半か」

御子柴さんが腕時計に視線を落としてそう呟いた。

ちなみに御子柴さんが身に付けている腕時計はブランドに詳しくない人でもほとんどの人が知っているような超有名ブランドの百万円近くするものだ。そんな高級腕時計で時間を確認すると、御子柴さんの視線は私に向けられる。

「何か食べてくか?」

「えっ」

その言葉に顔を上げると、御子柴さんは呆れたような表情でため息をつく。

「腹減ってるんだろ。奢ってやるから」

「でも、あの……」

突然の誘いに困惑してしまう。

というのも、御子柴設計事務所で働き始めて三年が経つけれど、こうして御子柴さんにご飯へ誘われたのは今が初めてだった。

佐原さんには何度か誘われて、佐原さんの美人な奥様も一緒に三人でご飯を食べに行ったことがあるけれど、御子柴さんと二人で外で食事をしたことは今まで一度もなかった。

「行くぞ」

「あ、待ってください」

私の返事を待たずに御子柴さんが歩き出してしまい、そのあとを小走りで追いかける。
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