堅物社長にグイグイ迫られてます
御子柴さん気付いていたんだ。私が仕事中のふとした瞬間にスマホに手が伸びて待受を見ていること……。

私だってあれから何度も待受けを変えようとはしている。でもなぜかいつもできずに結局はそのままにしてしまうのだ。

さっき御子柴さんには俊君とはもう別れたと言った。それは、半分は本当で半分は嘘。私はきっと心の中ではまだ俊君とはっきりと別れられていない。

「もう一度、お互いが冷静なときにしっかりと会って話をしたらどうだ」

御子柴さんはきっとそんな私のことを見透かしているのだと思う。追加で運ばれてきたビールを飲む御子柴さんに私はどう返していいのか分からず俯いた。

「お前がはっきりあいつと別れないと、俺も前に進んでいいのか分からない」

御子紫さんは呟くようにそう告げると二杯目のビールをぐびぐびと一気に飲み干す。そんな彼に向かって私は思わず首を傾げた。

「……どういう意味ですか?」

どうして私が俊君とはっきりと別れないと御子柴さんが前に進めないのだろう。そもそもどこへ進むの?言葉の意味が分からなくて尋ねてみたけれど、御子柴さんは「自分で考えろ」と言葉を濁すだけで教えてはくれなかった。


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