堅物社長にグイグイ迫られてます
ホテルの規模の大きさに驚く私とは正反対に御子柴さんは顔色ひとつ変えていない。

たまに忘れてしまうけれど、そういえばこの人は御子柴商事の御曹司なわけで、きっと子どもの頃からこういった高級な場所には通い慣れているのかもしれない。

私たちはエレベーターへ乗り込むと五階にある宴会場へと向かった。

【御子柴商事 創立記念パーティー】

大きな看板が出ている会場の入口では私と年齢が同じか少し上くらいの男性が一人で来場者の受付をしていた。

彼の視線がふと私たちへと向けられると、大きく目を見開くのが分かった。

「悟さん。こんばんは」

受付の男性はやや緊気味にそう言うと、腰をほぼ直角に折って深々と頭を下げる。すると、それを見ていた御子柴さんが困ったように笑った。

「やめろって、光太郎。俺にそんな態度取らなくていいっていつも言ってるだろ」

「いえ、そういうわけにはいきません。悟さんは社長の息子さんですし、いずれは御子柴商事を背負って立つ方なので」

受付男性のその言葉に御子柴さんは一瞬眉をひそめ、そして軽くため息をついた。

「あのなぁ。何度も言ってるが、俺は親父の後は継がないから」

「でも」
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