堅物社長にグイグイ迫られてます
「それではよろしくお願いしますね、雛子さん」

「えっ、あの……」

「では、私はこれで失礼します」

彼女は軽く頭を下げると颯爽とこの場を去り、人混みの中へと姿を消してしまった。

ポツンと取り残された私はなんだか胸の奥がざわざわと落ち着かない。

御子柴設計事務所がなくなるってどういうことだろう……?

「お前、まだこんなところにいたのか」

すると、園田さんとちょうど入れ替わるように背後から聞き慣れた低音が聞こえて私は慌てて振り向いた。

「み、御子柴さん。どうしたんですか」

「どうしたって仕事が終わったからこれから家に帰るんだろ。いけないのか」

「あっ、いえ。今日は帰るの早いんだなって思って」

ここのとのろ残業続きだったし、てっきり今日もまだまだ仕事を続けるのかと思っていたけれど。

「佐原に追い出された。たまには早く帰って体を休めろってな」

不本意だったのか不満気にそう呟いて御子柴さんは歩き始める。
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