堅物社長にグイグイ迫られてます
「それははっきりとは覚えてないが。最初のうちは毎日毎日小さなミスやアホみたいなドジばかりするお前のことが単に心配で、気が付くといつも目で追いかけてるだけだった。なんか危なっかしくて放っておけなくて、気が付くと俺の中でお前の存在がどんどん大きくなっていて、まぁつまりは惚れてたわけだ」

「そ、そうなんですか」

ぜんぜん気が付かなかった。まさか御子柴さんが私のことをそんな風に思っていてくれたなんて。普段の御子柴さんの言動からは一ミリも伝わってこなかったから。

「私、どちらかというと御子柴さんから嫌われてると思ってました」

「だろうな。自分の気持ち、必死に押さえてたから」

彼氏のいる女を好きになるなんて望みないだろ、と御子柴さんは苦笑交じりにそう言った。

私が御子柴設計事務所に入った頃は俊君と付き合っていたし同棲もしていた。そのことを直接、御子柴さんに話したことはなかったけれど佐原さんには話していたからきっと御子柴さんは佐原さんから聞いて私に彼氏がいると知っていたんだと思う。

「あと理性もけっこう抑えてたな」

「理性?」

「このままだと風邪を引くと思ってお前の濡れた服を脱がせて俺の服を着せてるとき、正直言うとけっこうヤバかった」

「……」

いつのことを言われているのか分からなくて少し考えてしまう。
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