堅物社長にグイグイ迫られてます


そのあとは椿さんに連れられて御子柴さんの実家の中に入れてもらった。

今は一階にある広い和室の座布団の上に正座をして座っている。椿さんはお茶を用意するために席を外してしまった。一人でこの場所に取り残されるとなんだかそわそわと落ち着かない。

とりあえず窓の外に広がっている立派な日本庭園を眺める。こうしてみるとまるでどこかの高級旅館にでも来たかのように思えてしまう。

視線を再び室内へと戻せば、床の間には大きくて立派な花瓶が置かれていて、綺麗な花が上品に飾られている。そういえば玄関やこの部屋へくる途中にも花瓶がいくつか置かれていて花が飾られていた。

「お待たせ」

襖が開くとお盆を持った椿さんが入ってきた。

「どうぞ、お茶よ」

「ありがとうございます」

テーブルの上に緑茶の入った湯飲みが置かれる。

「キレイなお花ですね」

床の間の花瓶の花を見ながら言うと、椿さんが嬉しそうにくすっと笑った。

「私の趣味なのよ。花が好きでね、さっきもご近所の行き付けの花屋に買いに行った帰りだったの」

そういえばキレイな花束を持っていたっけ。

「もうすぐ主人もここへ来ると思うから待っていてね」

「はい」

返事をしながらまた緊張感がやってくる。さっきは全く相手にされずに追い返されてしまったけれど本当に来てくれるのかな。もしも来てくれたらしっかりと伝えないと。でもその前にここにいる椿さんにも確認しておきたいことがある。

「あの、椿さんもやっぱり御子柴さ……悟さんには御子柴商事を継いでほしいと思っていますか」

そう尋ねると椿さんはそっと首を横に振った。
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