堅物社長にグイグイ迫られてます
「告白の返事聞きたいけど、今は聞くのがこわいな」

「どうしてですか?私、ちゃんと返事しますよ」

「いいよ。もう分かってるから」

「分かってる?」

「ああ。俺はきっとお前にフラれる」

ばっさりとそう言って、御子柴さんは小さく笑った。

「いつもお前がミスをするたびに散々叱り飛ばして偉そうなこと言ってるくせに、今回の件ではかなりヘタレた部分を見せたからな。親父の圧力に屈して、建築家辞めるとか、事務所畳むとかさ。いい歳した大人が親父に頭が上がらないなんて笑えるよ。かっこ悪いよな。こんな俺が、今はお前に良い返事がもらえるとは全く思わない」

御子柴さんはきれいにセットされた髪の毛を片手でわしゃわしゃと乱暴にかきまわす。そんな項垂れたような姿に私は思わず声を張り上げるように叫んでいた。

「そんなことないです」

たしかに今回のことで御子柴さんの弱い部分が見えた気がする。

初めて会った日から、私はずっと御子柴さんは私とは正反対の人だと思っていた。いつも強気で自信家で何でも完璧に卒なくこなしてしまう、そんな私とは遠い存在の人だと思っていた。

でもそうじゃなかった。御子柴さんにもちゃんと私と同じように弱い部分や欠点があった。

でも、誰だってそういう顔の一つや二つは持っている。

「常にパーフェクトな人なんかいませんよ」

御子柴さんの瞳を見つめて私ははっきりとそう言った。

「ヘタレたところも、笑われるようなところも、かっこ悪いところもみんな当たり前のように持ってます。ほら、私を見てくださいっ!」

そう言って、私は手の平で自分の胸をトンと叩いた。
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