卒業します
「夏苗ちゃん、もう眠くない?」

再び走り始めた車の中で、春人さんがからかう。

「さすがにもう大丈夫です。」

強く言えないのが悔しい。

「だったら、そこのカバンの中からサングラスを出してくれる?」

朝早く出かけた時は要らなかったサングラスも

日が上ってきたこの時間には、必要みたい。

「うん、勝手に探っても大丈夫?」

一言断ってから、カバンの中を探すも見つからない。

「う~ん。
見つからないんだけど……ホントにここに入れた?」

「えぇ~、ない??」

私が探ってるカバンの中に、春人さんの手が延びてきた。

わぁっ!

びっくりした!!

「あっれ~?
ないなぁ…………………。」

ブツブツ言いながら探る大きな手が、私の手と触れあう。

これまでだって、何度も体温を計ったり頭を擦られたりしたのに………

何で今更急に、こんなにドキドキするの??

「ちょっと、春人さん!!
私が手を出すから待って~」

敢えて自然を装って、何でもないような声を出したけど……

上ずって聞こえるのは意識し過ぎてるせい??

結局、サングラスは見つからず

「まぶしい~!」と言いながら、運転している。

私は………

意味の分からないドキドキに

窓の外を眺めて、冷静さを取り戻そうとしているの。
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