夏の終わりとアキノソラ
「彼氏とうまくいってねぇの?」


「…いや、そういうわけじゃないけど。」曖昧にごまかしながら、架空の彼氏話はこれ以上は辛いな、と思った。


「じゃあ本当に、何かあったわけじゃねぇんだな。」
「そうだよ。」

ふーん、といった調子でカズはいくらか頷いていた。


「そういや深雪さん、かなり綺麗な人だね。性格も良さそうだし。」架空の彼氏話になるのを恐れ、私は話題を変えた。本当は今一番触れたくない話。心が痛い。苦しい。でも、これ以外に話題がみつからなかった。



「そうだな。」


「どこまでいってるの?深雪さんとは。」


「さっき、告白された。」


ずきん。



カズにも聞こえたのでは?とおもわれるくらい大きな音で私の心は痛んだ気がしたが、当然実際には音は出ていない。

急いで笑顔をはりつけて、私はまくし立てた。


「よかったじゃん。これで晴れてカズも両想いだね。ってかもしかして、私がカズは深雪さんが好きって伝えてあげたからそうなったんじゃないの?私キューピッドじゃん。あんな素敵な彼女、カズにはもったいないくらいなんだから、大事にしなくちゃね。あーあ、これでやっと私の肩の荷が降りるって感じ。いつまでもカズが一人でいると、保護者的立場の私としては気が気じゃないもんなぁ。本当によかった。心から祝福する。これで私もカズの保護者から解放だね(笑)出戻りしてくることのないように。」
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