夏の終わりとアキノソラ
笑顔でそういって、カズをみる。返事がない。


「カズ?」


しばらく沈黙して、カズが口を開いた。


「俺は、お前が好きだったんだ。ずっと前から。」


カズは私から目をそらすことなく、続けてこう言った。


「失恋して、必ず店にくる姿をみて、いつか俺がお前の居場所になると、ずっと思ってた。嬉しかったよ、何かあると店に来てくれて。別に特に会話はなかったけど、少しでも支えになれてるならそれでもよかった。」


驚いて何も言えない私がようやく小さく声を発したが、カズの言葉に掻き消された。



「でも、もうわかったよ。お前の気持ちは。」


え?

私の気持ち?


「それ以上何も言わなくていい。お前が、俺のことなんとも思ってねぇことはよくわかった。」


違うよ、カズ。


「だから、もう何も言うな。悪かったな、こんなとこまで押しかけて。」


嬉しかったよ。


「もう、来ないから安心しろよ。」


違うよ。


「お前の言葉で俺もやっと前へ進めるかな、深雪さんとのこと、ちゃんと考える。俺にはもったいないくらいの女らしいから。」


私もカズが好きだよ…


「じゃあな」

そう言って、カズは喫茶店をでていった。私はなにもいえないまま、ただぼーっと話を聞いていることしかできなかった。

自業自得だ、と思った。
カズからの嬉しいはずの言葉の一つ一つが今は私の心を裂いていた。
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