君からのヘッドフォン
…違う、知ってる。この気持ち。

そばにいたのも、抱きしめてきたのも、助けてくれたのも、理解も、心配も、怒りも、全部、私があいつのことを突き放さなかったからで。


…好きだったからだ、私があいつのこと。



だから、今日も。

彼と決別した数年前の今日を消すために、私はあいつを利用して。

結局、彼と会ってしまって、思い出してしまって。

…気づいたら、あの日の防波堤にあいつを──松下柊彩を連れてきてしまっていた。
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