君からのヘッドフォン
頭の中で、彼の声が何度も反復する。


『栞帆…今度はちゃんと、いいやつ選べよ』

『栞帆なら、大丈夫。
ほかでもない俺が言ってるんだから、心配することなんてないよ』

『なぁ、栞帆。
もし俺たちが─────』


喉の奥でつっかえたような、あのハスキーボイスが、私は大好きだった。

彼の声を聞くたびに胸が高鳴った。


だから、伊澄くんを利用したのも本心だ。

あの過去の欲求を満たすために、伊澄くんを利用した。

けどさ。

全部違う。
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