新月の夜はあなたを探しに
26話





   26話




 次の日、累はやはりすぐに葵音の病院に来てくれた。
 前の日も黒葉に会うために遅くまで残ってくれたというのに、面会時間のスタートに合わせて来てくれたのだ。
 本当にマメな男だと思いながらも、葵音は彼に感謝していた。

 事故に遭った大怪我をした黒葉を見てから、葵音はある考えが頭の中にあった。
 それは、黒葉があの日記に何かを残しているのではないかという事だった。
 日記にではなくても、他のもので自分の事を葵音に残していると思ったのだ。

 日記によれば、相当昔から彼女は葵音の事故に囚われているのだ。
 長年の思いが達成されるこの日のために、きっと黒葉は残しているはずだ。
 ……自分がいなくなるのだから、何かを残したいと思うのは常だろう。



 そう思ってから、夜中に何度も病院を抜け出したくなってしまった。抜け出したとしても、自分の家の鍵は累が持っているのだ。無意味だとしても、葵音は落ち着きなく夜を過ごした。


 彼女は何を残しているのか。

 きっと黒葉は何かを残していると確信していたけれど、それが何なのかを葵音はわからなかった。
 
 早く彼女の考えを知りたい。
 そんな事を考えながら、眠れる夜を過ごしたのだった。




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