新月の夜はあなたを探しに



 「黒葉は、その力が自分にあること。そして、それを使ってお金のために知らない人の未来を見るのが役割だと知ってから、考え込むようになった。誰かを救える力があるのはすごいことだけれど、それをお金目的で使っていいのだろうかとね。自分の特別な力ならば、自分が大切にしている人に使いたいと思うようになったの。それを私にも相談してきたわ。………もともと私もお金も目的で使うのはおかしいと言ってきたから、黒葉の意見に賛成したの。……そして、力をまだ見ぬあなたに使った。その事によって家族に疎まれるようになってしまったけれど……。」
 「そうですか………。」
 「黒葉が必死にお金を返して家から出たという時に、私は星詠みの力を使ったわ。彼女がみた未来はあまりにも危険すぎるとわかっていたから………そして、未来を見たのは………今日だった。」 
 「今日………。」


 葵音はそれを聞いて驚いた。黒葉の大切な日を見ようと願った祖母は、星詠みの力で見たのは事故の日ではなく今日だったのだ。
 それは何を意味しているのか。
 黒葉の未来にとって、事故よりも大切な日となるのだろうか………。
 それを考えて、ハッとした。
 
 葵音が驚いた顔で祖母を見つめると、黒葉の祖母はニッコリと笑った。


 「そう……。黒葉の未来にとってこの時間が大切だという事は、事故で黒葉が亡くなることはない事を意味してるのでしょうね。事故で死んでしまうならば、私は事故の日を見ていたはずだから………。黒葉にとって、私とあなたが出会うことが何よりも重要だったのよ。」
 「そう、ですか………よかった………。」



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