新月の夜はあなたを探しに
ニッコリと笑い、キスしたことを嬉しそうに「ドキドキしたなー。」とか、「キスかー。」と言いながら自分の唇に触れて、キスした相手を目の前にして余韻に浸っている彼女を見て、葵音は少し呆れたように微笑んでしまう。
「おまえには敵わないな。」
「え?なんですか?」
「なんでもないよ。……ほら、寝るぞ。もう朝になるだろ。明日は10時には起きるんだからな。」
「キャ!葵音さんっ……!」
葵音は彼女の体を押し倒して、そのままベットに横にさせると自分も隣に寝転がる。
自分の胸に黒葉の顔がある。彼女もさすがに緊張しているようで真っ赤になって、葵音の顔を見れずにまっすぐな視線を胸に向けるだけだった。
「さっき自分からキスしたくせに、何を真っ赤になってるんだよ。」
「それはそうなんですけど……同じベットでこんなに近いのは、心臓に悪いです。」
「じゃあ、離れるか?」
「だ、だめです!!」
黒葉は葵音の洋服をがっちりと掴んで離さなかった。
「だったら寝るぞ。」
「わかりました……。」
「おやすみ、黒葉。」
「………おやすみなさい。」
すっかり目が覚めてしまった様子の彼女を尻目に、葵音はゆっくりと目を閉じた。
体全体で感じるむくもりが、安心すると思ったのはいつぶりだろうか。
黒葉の温かい体温と、早い鼓動を感じながら、「こういう気持ちを何と呼ぶんだろうか。」と考えているうちに、葵音は寝てしまったのだった。