新月の夜はあなたを探しに
少し焦り気味の彼の気迫に押されて、葵音は左手を累に差し出した。
累は両手で葵音の左手を掴むと、顔を寄せてじっくりと見た。
そして、すぐに「はー………。」と深い息を吐いた。
「なんだよ。人の手相を見てため息つくなよ。」
「変わってるよ、君の手相。」
「………え?」
「しかも、よくない方にね。」
累はもう一度左の掌を見つめながら、葵音に説明をし始めた。
「君の未来はいくつも枝分かれしていて、よく読めないと言っていただろ。」
「あぁ……だから、会うたびに手相を見せていたからな。」
そうなのだ。
累は、葵音の未来をよく気にしていた。ここまでわからない人はいないと言っていたけれど、近くの未来は当てていた。
だからこそ、会うたびに手相を見せていたのだ。
「久しぶりに会ったらこれだもんね………。今まで避けてきたのに、最悪なところに行きそうだよ。」
「………最悪って。」
「生命線に大きな線が入っている。」
「………なんだよ、それ。」
「わかるだろ。命の線だ。君はもしかしたら、何か大きな事件や事故、病気にかかって命の危険があるかもしれない。」
親友の思いもよらない言葉に、葵音は唖然としてしまう。
そして、言葉も出なかった。
葵音は知っているのだ。
累が冗談を言わないことも、占いが当たると言う事も。
「……そして、原因はきっとあの子だ。」
「黒葉…………?」
「葵音、僕は黒葉と離れた方がいいと思ってる。それに平星ってどこかで………。」
そう言って累は何かを思い出すように考え込んでしまった。
彼の言葉を聞いて、葵音は少し離れたところにいる黒葉を見つめて。
すると、こちらを心配そうに見ていた彼女と目が合った。
嬉しそうにはにかんで笑う黒葉を見て、葵音はどうしてか泣きたくなってしまった。