新月の夜はあなたを探しに



 葵音と出会ってから、毎日が新鮮で幸せで、1日1日がとても大切だった。
 彼の隣にいるだけで幸せだと思っていた。

 けれど、そんな日々を過ごすうちに、彼にもっと近づきたいとも思っていた。

 葵音は仕事も出来るし、優しいし、とてもかっこいい。
 それなのに彼女がいないのはおかしいな、といつも思っていた。
 けれど、一緒に暮らすうちに、彼は仕事の電話だけではなく、女の人からの誘いの連絡もよく来ているのがわかった。
 黒葉は気づかないフリをしていたけれど、口調が違うのだ、さすがにわかってしまう。


 けれど、葵音はいつも断っており出掛けるのも仕事の時ばかりだった。
 黒葉が知らないところで会っているのかもしれない。けれど、そんな事はないような気がしていた。

 年下で恋愛経験がなくて、特技も色気もなくて、そして秘密ばかりの女なのに、葵音は選んでくれたのだ。
 それが、信じられないぐらい嬉しくて、そして悲しかった。

 終わりが少しずつ近づいている証拠なのだから。


 「黒葉?どうした?」
 「あ、いえ!………恋人らしいこと、沢山したいなって思ったんです。」
 「あぁ、しよう。………一緒に風呂とか入るか?」
 「葵音さんとお風呂!入りたいですっっ!」
 「………おぅ……今度、入ろうな。」


 葵音は驚いた顔をしながら何故か苦笑していた。


 大好きなな彼と何でもやってみたい。
 いっぱい話して、触れ合って、出掛けて……彼の事を知りたい。


 カウントダウンが0になる日まで。



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