新月の夜はあなたを探しに
「あ……葵音さん……。」
「おはよう、黒葉。」
そう言うと、彼の顔がゆっくりと近づいてきて、唇にキスを落とされた。
触れるだけの短いキス。
けれど、彼が離れるときもじっと自分をみつめてくら様子がとても色っぽく見えて、黒葉はドキリとしてしまう。
彼の長い睫毛に、綺麗な茶色の瞳が伏せ目がちに見えてドキドキしてしまう。
「ほら、黒葉。おはようは?」
「あ、おはようございます。」
「………おまえ、今のキスの意味わかってないだろ?」
黒葉はまだ覚醒していない頭でキョトンとしたまま彼を見つめると、葵音は困った顔で笑った。
「おはようのキスだろ。恋人同士になったんだ。こういうのは女の方がやりたがるんじゃないのか?」
「あ!なるほど………嬉しいです………。恋人だから……。」
黒葉は葵音の言葉で、やっとキスの意味を理解し、先ほどのキスを思い返す。
それだけで、また胸が高鳴ってくるのを感じた。
恋人になったら、こんなにもドキドキすることが起こるのだ。それを想像するだけで、顔が赤くなってしまう。