新月の夜はあなたを探しに
22話





   22話



 月が輝く夜空の下を葵音と黒葉は2人で歩いた。
 影が出ているぐらいに光る月を、葵音は綺麗だとは思えなくなっていた。
 黒葉が言う通り、星が見えにくいなと思うだけだった。

 なまゆるい風が流れていたけれど、2人はしっかりと手を握っていた。心なしか、葵音が握る手の力が、少し強いような気がしていた。


 「明るいな。」
 「……月は温かいから好きなんですけど、やっぱり嫌いです。」
 「……そうか。」


 黒葉の名字には星が、葵音の名字には月がある。葵音は自分の持ち物に月の物を準備する事があった。それぐらい自分を示すものとして月のデザインを使うぐらいだった。
 だからなのか、彼女に月が嫌いと言われると、何故かドキッとしてしまうのだ。
 そして、「月を好きになればいいのに。」と思うのだ。


 いつもより明るい公園内を歩いて、湖のほとりに座り込む。
 もう2人は、服が汚れる事を気にする事はなかった。
 膝を立てて座りながら、葵音の隣にピッタリと寄り添うように黒葉が座った。


 「やっぱりいつもより見える星が少ないですね。」
 「そうだな。」 
 

 星空を見つめながら、黒葉はゆっくりと話し始めた。その言葉は、葵音が何よりも心地いいと思える声だった。



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