3度目に、君を好きになったとき
8.永遠に消えない青


「蓮先輩、おはようございます」


朝、廊下ですれ違ったとき。

なるべく明るく声をかけたつもりだったのに、


「……おはよう」


先輩からは礼儀的な挨拶が返ってきただけだった。

いつもなら優しく微笑みながら声をかけてくれる。

けれど今日は、一瞬も笑顔を作らず、合いかけた目もすぐにそらされた。


温度の感じられないその目は、『おはよう』という言葉さえ返ってこないのでは、と危ぶむほど冷え切っていた。



(私……何か、したのかも)



常に穏やかな蓮先輩から冷たくされることは、滅多にない。

だからよけいに、心に負った傷が深かった。



「蓮、おはよう」


聞き覚えのある声がして、そっと振り返ると、三井先輩へ向けて優しく微笑む蓮先輩の姿が視界に入った。

私へ向けた冷たい視線とは全く違う、優しい眼差し。



「ねぇ。今週末、一緒に美術館に行こうよ。蓮の好きそうな絵を見つけたんだ」

「美術館か。いいね」


まるで付き合いたてのように親しげに話す彼らは、すぐに私の視界から消えていく。

私が入る隙なんて、欠片もなかった。

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