【短完】赤いチェックのスカートが翻った夏が来る。
お父さんは泣いていた。あれから毎晩夜に泣いて、朝になったら諦めたように笑顔を作って笑うんだ。

「おはよう。」と。

好きじゃないのなら、結婚なんてしないで。愛情なんて注がないで。期待してしまうから。

それでも、私がお母さんの行動の意味を理解できるようになってから自暴自棄にならずに済んだのは幼なじみがいたからだ。

「僕が!僕がゆののそばにいるから!」

お母さんがいなくなっちゃったと分かってから泣いたあの日に、幼なじみが言ってくれた言葉。

「ありがとう、かぐら。」

だから、笑っていられた。君がしてくれた約束があったから。そして、神楽は確かに約束通りずっと私の傍にいてくれた。

楽しいことがあったら一緒に笑って、悲しいことがあって泣いた時には背中をさすってくれて。やけ食いをしたくなったら付き合ってくれたし、困ったことがあったらなんでも相談した。

私にとって何よりも特別な存在だった。

そして、あの時から10年。私、由乃と幼馴染の神楽は17歳の高校2年生になった。


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