【短完】赤いチェックのスカートが翻った夏が来る。
もしも自分にお母さんがいたらこうなのだろうかと、ありもしない妄想を考えたりもする。

もしも。このまま7歳の頃あの人が出ていった時にタイムリープしたら私はなんて伝えるだろうか。

行かないで、と懇願をする?さようなら、と笑う?いや、きっと何もしないのだろうな。

ありもしないことをとやかく言っても無駄か。過去があって今があるのだから。今も楽しくないかと問われればそんなことは全然ない。

私は幸せだもの。

溶けそうになったアイスを慌てて舐める。木の香と爽やかなソーダの味が口の中に広がる。

隣を見れば私と同じように黙々とアイスを食べている神楽。

「明日から夏休みだな。」

「そうだね。もう高校2年の夏休みかぁ。時が経つのは早いなぁ。そう思わない?神楽。」

「あ?ああ、そうだな。」

海風で私の制服のスカートが揺れる。黒地で裾が青色のスカート。家に置いてあるブレザーも黒なので冬になると上下合わせて真っくろくろだ。

視線の上で神楽の柔らかそうな髪がはねた。私も後頭部が動いている感覚がする。後ろでひとつにまとめた髪の毛が揺れているのだろうな。

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